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浄法寺漆を訪ねる

2月最後の週末、県北の町(二戸市浄法寺町)へ出かけました。

盛岡に近くなると岩手山が見えてきます。雪を抱いた雄々しい姿に胸がスッとします。
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ふり返って見た姿は女性的な印象となり、優美という言葉がふさわしい。
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着いたところは「滴生舎(てきせいしゃ)」。
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浄法寺(じょうぼうじ)は量、品質ともに日本一の漆の産地です。

館内に漆器がずらり。右奥の工房で作業する職人さんの様子が見えました。
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端然としたたたずまいの漆器たち。

目と心の保養になります。
じっくりとっくりた~んまり眺めました。

すぐそばに、瀬戸内寂聴さんが長く住職を務めた天台寺があります。
いつかゆっくり訪れてみたいです。

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誕生日に何が欲しい?と聞いてもらえたものだから、一日考えて「漆器」と返事。

盛岡で光原社に寄るたび、漆器の棚に見入っていました。
黒々と深い発色、力強いかたち・・・見つめるほどに心打たれる風格。
「畏れ多い」という感じ。憧れるにふさわしいもの。

・・・・と、思っていたのですが。

私以上に漆塗り(の、工程)に興味を持つ夫なので、即「浄法寺に探しに行こう」となりました。
いつか行けたらいいね、と話していた「滴生舎」です。
製品の生まれるところを見てみたいという気持ちが二人にあります。

浄法寺の漆器のほとんどが、食卓に馴染むシンプルで使いやすいデザインでした。
「塗師の仕事は七割までで、あとの三割は使い手が完成させる」と言われるそうです。
仕上げの研磨をしていないのだそうです。
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  岩舘 隆 汁椀
この、おっとりとした形に惹かれました。実直そうな。
溜塗の方が、使い込んだときの色の変化をより楽しめるらしい。

「毎朝このお椀で味噌汁を飲むぜよ!」
・・・龍馬伝かぶれはさておいて・・・
私の手のひらで、残り三割を作り上げるんだ!というよろこびがわいてきました。(緊張もね)
「優しーくふきんでふきふきして育てるぜよ!」 ←言いたい
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こんなふうに気負わず使えたらいいな~と思いつつ眺めた、使い方あれこれが載ったパンフレット。
煮物や和え物を盛りつけてみたいと思った小さめ菓子盆や、おしゃれーな椿皿、食卓をきりりと引き締めてくれそうな片口・・・、見ていると欲が止まりません!

中塗りから仕上げまですべての工程に浄法寺漆が使われたものもありました。
(私の選んだのは中塗りまで中国産使用のもの。同じ形、同じ作り手なのにお値段が倍以上なんだもの!!)
産地ならでは、「掻き子椀」(塗師が、自ら漆の木から採取した漆を使用)もありました。

希少で高価な浄法寺漆ですが、仕上げの塗りは浄法寺の漆を選ぶ作り手が多いのだそうです。
滴生舎のスタッフの方から、漆の話をたくさん聞くことができ、この点も満足です。
家に着いてからも、パンフレットや本、ネットで知識を肥やしました。(ウイッシュリストも増えたけど・・)
本は、

手のひらの仕事―岩手・秋田・青森

奥山 淳志 / 岩手日報社


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暮らしと器―日々の暮らしに大切なこと

山口 泰子 / 六耀社


北東北のシンプルをあつめにいく

堀井 和子 / 講談社



以上の三冊は私の大切な、何度でも読み返したい本です。

ネットでは、
jokogumo-よこぐも- うるしの話
浄法寺漆産業
など。

現在国内で流通している漆の、98%が輸入(中国産)によるものだそうです。
貴重な国産漆の2%のうちの大半が浄法寺漆なのですが、
漆の掻き手が少ないこと(後継者不足)。
一本の漆の木から採れる漆の量は牛乳瓶一本ぶん(およそ200g)ということ。
漆の木が育つのに20年かかること。

すばらしい日本の技である「漆」が、この先も暮らしとともに続いていってほしいと、私のような者でも心から思います。
「漆」に携わる人が「おまんまくいあげ」になってしまわぬように!

官民挙げて国産漆を守ろうとする動きも活発になっているようですが、
何よりも、使い手が買い求めその良さを実感できることが肝心なのでは。
そうそう気安く買えるものではないのだけれど・・・
だからこそ、いとおしく思い大切に使っていけそうな気がします。
by harokijs | 2010-03-03 23:19 | おでかけ